高強度鋼の延性を確保するためには、残留オーステナイトの加工誘起変態によって発現するTRIP(Transformation-Induced Plasticity)効果の利用が有効です。本研究室では、マルテンサイトやベイナイトなどの高強度の基地組織中に微細な残留オーステナイトを分散させる手法の開発、ならびに得られる材料の特性評価を行っています。図3(a)と(b)は、それぞれ中Mn鋼の二相域焼鈍、および高Crマルテンサイト鋼のQ&P処理(Quenching and Partitioning process)によって分散された残留オーステナイトを示しています。また熱処理のやり方によっては、図4のようにマルテンサイト(α’)をフィルム状の残留オーステナイト(γ)が取り囲むような組織(コア-シェル構造)を得ることも可能です。残留オーステナイトの特性を最適化して鋼の強度-延性バランスを大幅に改善できれば、第3世代先進高強度鋼(3rd AHSS)として自動車用鋼板への適用が期待されます。