準安定オーステナイト鋼を冷間加工した際に生成する加工誘起マルテンサイトは、焼入れ処理により得られる同組成のマルテンサイトよりも転位密度が高く、微細な組織であるため、より高強度であることが最近の研究で明らかになりました。そのため、次世代の高強度鋼の構成組織として積極的に利用されていくことが期待されています。本研究室では、加工誘起マルテンサイトの特性を正確に評価するために、EBSD(Electron BackScatter Diffraction: 電子線後方散乱回折)法やTEM(Transmission Electron Microscopy: 透過型電子顕微鏡)(図9)、X線や中性子線回折を利用したラインプロファイル解析(図10)などを駆使して加工誘起マルテンサイトの形態や結晶学的特徴、内部に含まれる転位の性質などを調査しています。最終的には、加工誘起マルテンサイトの特性を生かす最適な合金設計を行うことで、他の組織との複合化による新しい鉄鋼材料の創成を目指しています。

図9 EBSDとTEMによる加工誘起マルテンサイトの観察例

図10 準安定オーステナイト(Fe-18Cr-8Ni)を
20%圧延したときのX線ラインプロファイル
![構造材料工学研究室[土山研究室] - 九州大学 大学院工学研究院 材料工学部門](https://orchidmink36.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2024/05/77d0d6a051d6497df8380beb1c9e20b3-1.png)