ガス元素である窒素を鋼に多量に添加することができれば、鉄鋼材料の強度を大幅に上昇させることが可能となります。本研究室では「固相窒素吸収法」と呼ばれる熱処理によって、純鉄やステンレス鋼に高濃度の窒素を添加した材料を創製し、組織や特性の評価を行ってきました。その結果、図7に示すように、1mass%の窒素を添加したオーステナイト鋼は、一般的な材料の約4倍の降伏強度を有することがわかりました。また、電子顕微鏡で変形組織を観察すると、転位がすべり面上に一列に整列した、いわゆるプラナー転位列(図8)が発生し、それが大きな加工硬化をもたらすことも明らかになっています。高窒素鋼の特殊な変形挙動を解明し、またさらに高濃度の窒素を含有する鋼を創製することで、高耐食材料、生体材料、耐水素脆化材料などへの応用を目指します。